急行「あぶくま」
 想い出の列車のMENU 利用上の注意

■ 想い出の列車 その4 急行「あぶくま」

大学時代を岩手県の盛岡で過ごした。

当時はまだ東北新幹線は開通していない。山形から仙山線で仙台に出て、そこから東北本線に乗り換えて盛岡へ。当時は仙台〜盛岡間には昼間だけでも、特急「やまびこ」「はつかり」と急行「いわて」「もりおか」「くりこま」「あぶくま」「たざわ」が走っていたと思う。所要時間は特急で約2時間10分、急行で約2時間30分。学生時代は金は無いが暇があるのが常識。仙台〜盛岡の往復のほとんどを急行「あぶくま」を利用したものである。

もともと「鉄ちゃん」の私である。一度くらい鈍行列車で帰ってきても良いと思うのだが、四国に帰省する同級生の「盛岡〜四国間の鈍行列車乗り継ぎ旅程」は作った記憶があるが、約180kmの「盛岡〜仙台」を鈍行列車に乗った記憶は無い。あるのは、準硬式野球部の友人の仙台での試合の応援のため、友人の彼女と別の二人の友人とレンタカーを借りて、片道5時間をかけて「盛岡〜仙台」間を往復した記憶くらいである。その車中でもそれなりの想い出があったのだがここでは割愛する。しかし、二人の友人のうちの一人は、以下の想い出に出てくる友人と同一人物である。

大学生活を終えてアパートを引き払う日、友人と朝早く、山形からの迎えの運送屋のトラックに家財道具を積み込み、不動産屋に鍵を返し、南プラザホテルで朝食をとり盛岡駅に向かった。そして乗り込んだのも急行「あぶくま」だった。その友人とは2時間半の車中での時を過ごした後仙台駅で別れ、彼は郷里の名古屋行きの飛行機に乗るために仙台空港に向かい、そして私は山形へ帰るべく仙山線に乗り換えた。そしてそれが彼と会った最後の日となった。いや、死んだ訳ではないぞ、ちゃんと生きている(笑)

翌年、彼から「今度結婚するので結婚式に出て欲しい」という連絡をもらい、名古屋に行くべく朝自宅で用意をしていたらメガネのプラスチックのツルがポキッと折れた。なんか嫌な予感を感じつつも替えのメガネを取り出した、その時である。電話のベルが鳴り、電話に出ると彼からの電話であった。「都合で結婚式が中止になった」という驚きの電話であった。女性であれば「何故?どうして?」と根掘り葉掘り聞くのであろうが、そこは男友達の仲である。多くを聞かず、「わかった」と言って電話を切った。その後彼とは年賀状のやり取りしか無いが、「その時訳ありの結婚をしたが、その後別れた。」とか風の便りを聞くのみである。

大学時代は毎日のようにつるんで飲みに行ったり、遊びに行ったりした仲の友人であったが、大学を卒業してそれぞれの道を歩き出すと、それぞれの人生が待っているのである。ちなみに訳ありと言っても2時間ドラマになるような訳ありでは無い(^^)。学生時代からつきあっていた同級生の彼女(私も彼のアパートに行ったときに何度か彼女の手料理をごちそうになった)と結婚したのだが、彼女の父親が同じ大学の教授で、その父親の大反対にあってもめたらしいのである。

このように、列車というものは人を乗せていると同時に、乗っている人の人生も乗せて走っているのである。そして私も含めた乗っている人は列車自体への想い出は無くとも、列車が係わった出会いや別れといった人生に想い出を持っているのである。それが「列車の名をつけたトラベルミステリー」の素地となっているのであろう。「山形新幹線つばさ殺人事件」はあっても「全日空80便殺人事件」は聞いたことは無い(^_^;)

話は戻るが急行「あぶくま」自体に対する記憶はほとんど無い。あるのは「長距離用の7両編成の電車ではなかったか?」というくらいである。今回は「記憶に残っていない想い出の列車」であった。

追記: 大学時代、仙台と盛岡の往復は急行「あぶくま」以外に使用した記憶は無いが、最後に往復したのはくしくも「あぶくま」では無く、急行「くりこま」と特急「やまびこ」である。
大学を卒業した年のGWに、帰郷した山形から、大学の同級生の結婚式のために盛岡に行く途中に仙台〜盛岡間で乗った「急行 くりこま」で初めてのグリーン車に乗った。しかし、なぜこの時グリーン車に乗ったのか記憶にない。たぶん、GWの混雑で普通車が満席だったからではないかと思う。そして、盛岡からの帰りの仙台までの「特急 やまびこ」も仙山線の普通列車も満員で、山形までの約4時間経ち続けだったのである。それも結婚式の大きな引き出物をぶら下げて。
その後東北新幹線が開通したが新幹線で往復した記憶も無く車の利用が主となった。
ちなみに、「山形〜盛岡」の経路は仙台経由がメインであるが、裏経路としては、山形から奥羽線を北上し、秋田県大曲市から田沢湖線で盛岡に出る経路がある。冬季はなかなかあてにならない経路であるが、紅葉の季節などには何度か利用した記憶がある。その経路も、今では山形〜新庄間は標準軌化され山形新幹線「つばさ」が走り、田沢湖線も電化の上標準軌化され秋田新幹線「こまち」が走っている。時代は大きく変わったのである。そりゃそうだ、35年も前の話なのであるから。

* 昔の記憶を元に記述しているので時刻や詳細には誤りがあるかもしれません。

統計表示